28回京都メディア懇話会月例研究会(2018年5月24日)


日   時  2018年5月24日(木)午後6時30分~同8時00分

会   場  同志社大学今出川キャンパス「寒梅館」6階大会議室

演   題  「原爆と細菌戦~京都の軍事研究資料を探って」

発 題 者  岡本 晃明氏(おかもと・てるあき)

京都新聞社編集局社会担当部長。1992年入社、社会部、論説委員を経て現職。重度障害者の在宅生活を追い、2006年度の新聞協会賞(編集部門)を受賞した連載「折れない葦」取材班キャップ。連載「揺らぐ平和と記憶 米軍Xバンド基地から」取材班で第22回坂田記念ジャーナリズム賞特別賞、湯川日記と軍学共同研究の取材班で第25回坂田記念ジャーナリズム賞。

講演の趣旨  

フェイク・ニュースが社会に混乱を招き、戦時中の出来事を巡っても、戦後70年以上が過ぎ関係者の直接証言を聞くことが困難になる中で、根拠の乏しい否定や見解がネット空間にあふれている。公文書の破棄や保存のあり方も政治問題となっている。京都新聞報道部の取材班では2017年から、京都の大学における知が戦争中、どのように軍事研究に関わったのか、日記や文書など1次資料を発掘し、現在の大学やミュージアム、社会がどう負の記憶を継承しているのかを追うことにした。

特に京都帝国大は後のノーベル賞受賞者湯川秀樹博士ら物理学者が旧海軍の原爆開発に関わり、旧満洲で生物兵器開発のため人体実験をしたとされる731部隊に多くの医学研究者を送り込んだ。秘密裏に進める軍事研究と「公開・平和利用」を掲げる科学者の倫理と衝突し、防衛研究費が増大する現代の課題でもある。

取材班では、長く眠っていた戦時中の湯川博士の日記を掘り起こし、原爆開発の会合に湯川博士が出席していたことを裏付けた。また731部隊員だった京大医学部出身者の論文から、ペストなど細菌研究が人体実験だったかを検証、アイヌ人骨収集や広島の被爆者の解剖データ収集も同じ研究室が関与していることの意味を連載記事で考えた。軍から強いられただけでなく、学術研究自体に帝国の版図を拡大し、権力に基づいて研究成果を得ようとする力学や構造を浮き彫りにできた一方、検証されずに重要な歴史資料が分散したり廃棄されたりしていることが明らかになった。それは新聞メディアにとっても、負の記憶や真実を伝える上で土台となる資料や証拠にどう向き合うかという問いを突きつけている。

コメンテーター:永井るり子(京都光華女子大学非常勤講師)

司      会:齊藤 修(当会理事長)

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